昨今の緊迫した北朝鮮情勢、核開発やミサイルが日本に及ぼす影響について、心配している方もいるかと思います。
北京で中国特派員カメラマンとして勤務している私は、今回北朝鮮に関わる重要な取材を2回経験することができました。2月のマレーシアでの金正男暗殺事件と、4月に北朝鮮で行われた軍事パレード(太陽節:金日成氏生誕105年)です。
■ 金正男氏暗殺事件
北朝鮮の金正恩党委員長の異母兄・金正男氏暗殺の一報は世界を震撼させました。NNN取材団もバンコク支局と日本からの取材班が、すぐさまマレーシアに入りました。一方私たち北京支局は、金正男氏が直前まで生活をしていたマカオに向かいましたが、そこでの取材は困難を極めました。金正男氏は謎の多い人物で、さらに私たちが接触した取材相手は自らに降りかかる災難を避けるように口を噤みます。「マカオでは事件の核心に触れるのは難しい」と判断して、私たちは、東京の国際部デスクと相談した結果、マレーシアに向かうことに決めました。
■ マレーシアへ
事件現場となったマレーシアでは、毎日朝から夜遅くまで、警察署や遺体が安置されている病院の張り込みが続きました。猛毒のVXガスを使用した暗殺事件ではないかとの疑いもあり、日本の視聴者の皆様の注目に応えられるよう、各支局や現地のスタッフ合計25名以上で取材体制を組みました。
はたして「北朝鮮が国家としてどこまで事件に関与しているのか?」 事件の注目はその一点です・・・・
「北朝鮮籍の男性逮捕」、その一報は突然飛び込んできました。リ・ジョンチョル氏逮捕の情報です。
今回の事件で北朝鮮との繋がりが初めて明らかになった瞬間でした。その後、暗殺の瞬間の映像がテレビで放送されると事件に対する世界の注目度がピークに達しました。現場は毎日が山場の連続でした。
マレーシア警察長官が北朝鮮大使館職員関与の可能性を発表してから、「リ・ジョンチョル氏の釈放、そして帰国」「実行犯とされる女性二人の初公判」「北朝鮮カン大使へのペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)発動によるマレーシアからの国外追放」、そして事件は、マレーシアと北朝鮮との外交関係にまで及び、事件の先が見えない状況にスタッフの疲労もピークに達しました。
結局私たちのマレーシア滞在は34日間に及びました。各番組の中継や毎日の撮影取材と現場経験の長い私でも、ここまでの緊張感を感じる事件現場は、1995年のオウム真理教事件以来の出来事だと思います。
そして事件は、北朝鮮にいるマレーシア大使館職員とその家族、金正男氏の遺体と容疑をかけられていた北朝鮮大使館職員らとが交換帰国する形で一応の終息に向かいました。
結局、事件は今でも真相が解明されないままになっていますが、現在の朝鮮半島情勢から考えると、この事件が各国の首脳に与えた影響は少なからずあると思っております。
■ そして北朝鮮へ
マレーシアから北京に戻った私には、太陽節(金日成氏生誕105年)取材で北朝鮮本国に入ることが決まっていました。注目は、4月15日の太陽節当日に軍事的挑発行動を行うのか?
現在の金正恩氏を撮影することから北朝鮮の現状を垣間見ることができるのか?
そしてアメリカや日本はどのように対応するのか・・・・・
次回は12日間に及んだ北朝鮮取材を報告したいと思います。
マレーシアでの筆者
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