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緊迫の北朝鮮情勢 ~マレーシアから北朝鮮へ~ 後編

2017.05.11 制作技術

■ 緊迫の北朝鮮

マレーシアで暗殺された金正男氏の遺体が北朝鮮に移送された後、私たちは金日成の生誕105年を祝う「太陽節」を取材するため4月11日に北朝鮮の地に足を踏み入れました。
この頃、アメリカによるシリアへの空爆、米空母カールビンソンが朝鮮半島に向かっているなどの情報もあり、北朝鮮を巡る情勢は緊迫度を増していました。
北朝鮮の平壌空港に到着してすぐに当局より厳重な荷物検査を受けましたが、私はポケットWi-Fi2個を没収され、出国時に返してもらうための引換証を渡されました。
各国メディアの平壌入りがこの日に集中したため、荷物検査には2時間を要し、その後指定された宿泊先のある平壌市内に向かいました。


■ 制限された行動

北朝鮮国内では、私たちの行動は監視、制限されます。
宿泊は平壌市内を流れる大同江の中州にある羊角島国際ホテル。そのホテルは平壌の街とは一本の道で繋がっているだけで、私たちがホテルから自由に街にでることは許されていません。また、支給された携帯電話はNNNスタッフ同士や国際電話は出来ますが、私たちに同行している現地ガイドと通話することすら出来ないようになっています。

入国した日の夜、日本メディアが集まった夕食時に北朝鮮外務省から今後の取材スケジュールの説明を受けました。北朝鮮建国の父、金日成主席の生誕105年を祝う太陽節である4月15日以外は、名勝や教育、生活施設取材のスケジュールが組まれていました。
太陽節当日のスケジュールは全くの白紙状態で、その日に軍事パレードを行うのか、金正恩党委員長が姿を見せるのかも分かりません。しかし、この朝鮮半島情勢の中、北朝鮮が世界に向けて何もアピールをしないのも考えにくいことです。私たちは、いつ何が起こってもいいように心構えと準備を怠らないようにするしかありませんでした。

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結果として、今回の北朝鮮取材では、私たちは金正恩氏を撮影する機会が2回ありました。
金正恩氏肝いりの高層マンション群が立ち並ぶ「黎明通りの完成式典」と4月15日の軍事パレードです。


■ 突然の予定変更

黎明通りの完成式典は予定には組まれていませんでした。
前日の夜11時ごろ、突然「次の日の予定が変わった」と通知を受け、朝5時出発と告げられました。
次の日の朝、私たちは入念なボディチェックや荷物検査を受けて、目的地を告げられないまま現場に向かいました。
高層マンション群が立ち並ぶその式典会場には、金正恩氏の妹の金与正氏の姿がありました。この時、私たちはここに金正恩氏本人が現れることを確信しました。

私たちの前に姿を現した金正恩氏。お祝いの席にも関わらず表情は硬いままです。時折、笑顔を見せますが、私たち海外メディアに向けた顔は、敵愾心をあらわにして睨み付けるような表情をします。その金正恩氏の表情は、現在世界から孤立化を深める北朝鮮そのものを現しているように私には感じられました。

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■ 軍事パレード

4月15日の太陽節には平壌の金日成広場で軍事パレードが行われました。
当日、姿を現した金正恩氏。自国の軍隊や兵器に満足そうな笑みを浮かべます。
軍事パレードを伝えるニュース中継中、私たちは世界のメディアで唯一、生の金正恩氏を放送することができました。軍事パレードを背にしたNNN取材団の横島記者がパレードをリポートし、そこに集まる多くの海外メディアを紹介、そして、カメラを振ると敬礼しながら軍事パレードを見つめる金正恩氏の姿がありました。
世界の声に耳を貸さず、軍事強国化を進める北朝鮮。その軍事パレードを誇らしげに見つめる金正恩氏をリアルタイムで日本の視聴者の皆様にお伝えできたことは非常に意味のあることだと思いました。


■ さいごに

北朝鮮滞在の後半、私たちは平壌から車で6時間、悪路に揺られながら、半島東側に位置する北朝鮮第二の都市、咸鏡南道・咸興(ハムギョンナムド・ハムフン)に向かいました。そこで私たちを待っていたのは、第二次世界大戦の混乱によって北朝鮮に取り残された残留日本人の女性でした。
残留日本人がメディアの前に姿を見せるのは初めての事です。彼女は、日朝が友好関係になってほしいと話します。「日本にいる家族のもとや両親の墓参りに行きたい」と・・・・

現在、日本と北朝鮮の間には日本人拉致や戦後の問題など、未解決の事案が数多くあります。また、核開発、軍事強国化進める北朝鮮をめぐる情勢は予断を許さない状況です。
北朝鮮と陸続きで接している韓国や中国の特派員は北朝鮮取材の最前線にいます。北京支局員の私は、今後も北朝鮮という国を、日本人目線による様々な角度や方法で取材し、皆様にお伝えできればと考えております。

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