平昌五輪が冬季大会として日本最多の獲得メダル数で幕を閉じた2月末。
タレントの登山番組や、山頂からの絶景を視聴者に届ける番組がある中、報道にも山での取材があります。報道山岳班は群馬県のほぼ中央にある赤城山で雪山訓練を行いました。
訓練当日は天候に恵まれ、雪山とは思えない暖かさでした。麓で山岳ガイドさんから細かい注意を聞きながら登山準備をすすめていきます。
雪山取材では普段使わない特殊な装備を使用します。その一つがアイゼンという靴に取り付ける金属製のスパイクです。取材では機材を持ちながら雪山を駆け上がることもあるため、滑って転ばないように足下を確保する重要な装備です。
準備が終わると、実際に撮影しながら登頂開始。「俯瞰で小型カメラをまわしてみよう。」など、様々なことを試すのも訓練の目的です。慣れない雪道とアイゼンに苦労しながらも、雪化粧した景色に力をもらい、無事に全員で赤城の頂上、黒檜山に立つことができました。
次はビーコンを使った救助訓練を行いました。ビーコンとは一人ひとりが装備することで、お互いに自分の位置を相手に電波で知らせることができる送受信機で、雪崩などに巻き込まれた際に捜索の手助けとなる装備機器です。
今回は実際にビーコンを使って、雪崩に巻き込まれた人を探す訓練を行いました。実際に雪に埋もれると、数十センチでも身動きが取れなくなり、改めて雪崩の危険性を感じました。
今回は登山初心者に向けた基礎的な内容でしたが、人に教えることで、自分の知識の再確認にもつながる訓練になりました。
「もしも滑落してしまったら」「もしも雪崩で埋まってしまったら」
このような「もしも」が起こらないように、安全管理を徹底して取材をすることが大切です。それでも事故に巻き込まれてしまうかもしれません。報道山岳班は、その「もしも」を起こさないように訓練しています。
昨年3月に栃木県那須町で発生した、登山講習会中の高校生ら8人が亡くなった雪崩事故から1年が経ち、またこの冬には草津白根山の噴火で自衛隊員が亡くなっています。このように、雪崩や噴火など山での災害・事故は後を絶ちません。報道山岳班は、このような山岳地域での有事に備えて、定期的に訓練を行っています。
とはいっても山岳班のメンバーも普段は通常の報道取材をしています。もみくちゃになりながら政治家のコメントを撮った次の日には、山岳装備に身を包み雪山を登るなんてこともあります。
私は今回の訓練を通して、様々な場所で取材を行う報道の幅広さを感じました。