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NSNPって何?

2018.02.23 制作技術

安倍晋三総理大臣のこの言葉を聞いたことはありますか?
「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」

この言葉を掲げる安倍総理は、第2次安倍政権の発足から5年1ヶ月で76か国・地域を訪問しています。
日本の報道機関として、総理の外交政策は大きなニュースとなるのですが、海外の取材現場で政府要人への取材となるため、セキュリティ上の問題などから取材を行うことのできる人数が制限されてしまいます。そのため、NHKと民放キー局が合同で設けた組織がNSNPです!
NSNPとはNippon Satellite News Poolの略で、日本語では「日本衛星中継協力機構」。この組織は政府関係者らの外交の取材・映像を共同伝送することを目的としています。

■NSNPって何するの?
海外で取材した映像は、昔は現地から衛星回線を経由して日本へ送られていましたが、現在ではパソコンと専用ソフト、インターネット環境があれば映像を「送り届ける」ことができます。
取材・伝送の全体の流れとしては、

 1.海外で取材・撮影
 2.パソコンからインターネット経由で「撮影映像」を日本テレビに伝送
 3.日本テレビから各テレビ局へ「撮影映像」を渡す
 4.各社のニュースで放送

となりますが、このうち2.がNSNPの仕事です。

「報道」の現場で働く人にとって「素早く」「正確に」ニュースを伝えることはとても大切ですが、NSNPが担当する2.は特に「素早く」の部分に関わる仕事です。
より素早く、より正確に全ての映像を「送り届ける」ことが必要なため、時には「歩きながら」「移動のバスに乗りながら」でもパソコン操作をする手を止めずに伝送を行います。

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エストニアに着いた日本国政府専用機 会見場でネット速度を確認する筆者


■バルト三国・東欧訪問
182223_map.jpgさて、前フリが長くなりましたが・・・
先日、安倍総理はバルト三国東欧の6か国を訪問しました。この外交日程に私はNSNPのメンバーとして参加してきました。安倍総理の訪問国はエストニア、ラトビア、リトアニアのいわゆる「バルト三国」とブルガリア、セルビア、ルーマニアの「東欧3か国」の合計6か国でしたが、そのうち私はエストニアとブルガリアの2か国を担当しました。
バルト三国は世界史の授業で聞いた覚えはありますが、それぞれの国を訪れるのはもちろん初めてで、仕事とはいえ楽しみでもありました。

■1か国目:エストニア
エストニアはバルト三国で最も北の国。私が行ったときの最低気温は-7℃。バルト海に面する首都タリンが最初の仕事現場です。
今回の6か国訪問のなかでエストニアは最初の訪問国であり、安倍総理自身も初めて訪れる国であるため、総理の表情などはしっかりとニュースで伝えたい内容です。
そんな重要な映像を撮影している撮影チームの後ろで、私はパソコンとモバイルWi-Fiを片手にスタンバイしています。総理が政府専用機で無事に到着し、車で移動を始めた後、私の仕事が始まります!

撮影チームが撮影した映像を受け取り、パソコンを使って日本への伝送を開始します。
日本では「安倍総理、エストニアへ到着」というニュースを伝えるため、日本の全ての放送局が現地の映像が届くのを待っています。

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タリンの町並み 旧市街への入口、ヴィル門

その後、総理はエストニア大統領および首相への表敬・会談、関係大臣との会合、共同記者会見を行いましたが、それぞれの撮影映像も撮影チームに同行し、取材後すぐにパソコンで日本に伝送しました。
ホテルで一泊後、総理は2つめの訪問国であるラトビアへ向かうなか、私たち取材チームはそれより早い朝5時発で、総理の4つめの訪問国、ブルガリアへ先回りします!


■2か国目:ブルガリア
ヨーグルトを思い出す国・ブルガリアの首都ソフィアが次の仕事現場です。私は知らなかったのですが、ブルガリアはバラで有名な国で、世界各国の香水メーカーがブルガリアのバラを求めてやってくるそうです。そしていたる所に教会があります。

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雪の降るホテル前、奥には聖ネデリャ教会 世界文化遺産 アレクサンドル・ネフスキー大聖堂

安倍総理はブルガリアでも首相への表敬・会談、共同記者会見という過密スケジュールで動いています。今回は多くの取材があるため撮影は3チーム、NSNPも2人体制で各取材に同行しています。
ブルガリアで私は首相への表敬から共同記者会見の撮影チームに同行して会見場の後ろで黙々と伝送作業をし、今回も無事に日本へ映像を「送り届ける」ことができました。

安倍総理の外交日程に日本のテレビ局の代表として同行し、最前線の現場を肌で感じ、撮影した映像を日本に「送り届ける」。

日本の代表として仕事をすることの緊張感、海外の現場で働く高揚感、その両方を味わうことのできるNSNP業務はとてもやりがいのある仕事です。

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日本・ブルガリアの共同記者会見場 苦労を共にしたカメラマンと握手を交わす筆者(右)