テレビの生中継と言っても、サッカーや野球などのスポーツ生中継、災害現場からの生中継、バラエティ番組の生中継など、内容は様々あります。
多くの場合、生中継では現場に行った中継車からマイクロ波や衛星回線、光回線などを用いてテレビ局へ送り放送に繋げています。そういった現場では普通は多くのスタッフや機材が必要となりますが、ここ数年でそのような中継スタイルとは違ったシステムが出てきています。
それは、IP回線を使用したシステムです。皆さんが普段使っている携帯・スマートフォンなどで使用している複数の電波(回線)をまとめて使用することで、フルHDの高画質映像を伝送できる機材がこの数年で普及しました。
NiTRoもその一つである「TVU」という機材を所有しています。
今回はそれをどう使って生中継しているか、紹介します!
TVU送信機 |
これが「TVU」の送信機です。
メーカーで小型化を繰り返した結果、現在は小さめのリュックを背負う感覚で使用できるほどコンパクトになりました。この中にスマートフォンのようなユニットが複数入っており、それぞれが通信することで、より多くの情報を伝送することのできる太い回線を確保します。一方、受信機はテレビ局内のサブコンなどに設置し、インターネットにつなぐことで送信機から送られてきた映像・音声を受信します。
送信機は携帯・スマートフォンなどで使用する電波があれば、世界中どこからでも、カメラ映像や音声を送ることができ、また確保できる回線が太いほど、安定した高画質の映像が送れるということになります。
■回線のチェックが重要
この日は、お昼の番組、「ヒルナンデス!」での生中継。
5年ぶりに出現した長野県諏訪湖の「御神渡り(おみわたり)」。これを事前に収録したドローンの空撮映像と、地上から日本テレビ梅澤アナウンサーが生中継でリポートしましたが、この生中継部分でTVUを使用しました。私は以前所属していた報道でもこのTVUを使用していたこともあり、今回もカメラマンとして参加いたしました。
諏訪湖の御神渡り |
前述のようにこの機材は携帯電話の電波があれば、簡単に中継ができますが、その反面、電波状況の悪いところでは回線が細くなり、高画質ではなくなるどころか、最悪の場合には中継できなくなるリスクもあります。
そのため中継現場での事前の下見や回線チェックはいつも以上に重要になります。
現場での使用状況 | 受信側の様子 |
カメラとTVUを接続したら、テレビ局内の受信側スタッフと連絡を取り、回線状況を確認。受信側スタッフは、現場での電波状況に応じ、設定・監視を行います。
電波条件が悪いなどで中継が難しい状況では、設定変更や使用キャリアの変更、中継場所の変更、さらに有線によるインターネットの接続などを、送信側と受信側でお互いに現状を共有しながら、それぞれが臨機応変に対応する必要があります。
■機材の長所を生かした中継
通常の生中継では、中継車の準備や多くのケーブルの敷設、機材のセッティングや撤収には、長い時間と多くのスタッフが必要です。それに対し「TVU」は、あっという間にセッティング・撤収が可能で、車などで移動しながらの中継も可能です。ちなみに今回の技術スタッフはカメラ、音声、アシスタントの3名で行いました。
この日は2時間の番組枠内で、諏訪湖を中心として車で20分ほどの移動距離の3ヵ所から生中継を行いました。制作スタッフを含め車一台で回ることができる機動力もこの中継の特徴です。
とは言え、それによる大きな緊張感はもちろんあります。
中継現場の様子 |
大人数での中継で感じるチームワークや達成感から得るものも、この仕事のやりがい。
少人数での、リスクと送信機を背負いながらの達成感もまた、やりがいを感じます。
今後もこの機材の持つ特徴から、可能な映像表現を考え、提案し、挑戦していきます!
筆者 |