2018年1月9日(火)。第96回全国高校サッカー選手権大会の決勝戦、『流経大付属柏高校 対 前橋育英高校』は、前橋育英高校が昨年の屈辱から見事優勝を成し遂げて終わりました。私は埼玉スタジアム2002で行われたこの生中継にピッチミキサーとして携わりましたので、今回は中継現場での『音声』の業務についてご紹介しようと思います。
さて...、突然ですが、皆さんこの会場にはどのくらいのマイクがセッティングされていると思いますか?
正解は、なんと『約50本』です。
実況のアナウンサー、解説者、応援席にいるリポーター、応援団、観客席の歓声やピッチ上の選手、審判のホイッスルの音を拾うためのマイク、さらにテレビカメラに取り付けてボールを蹴る音や選手同士の激しい競り合う音を拾うためのマイクなど、用途に応じてスタジアム内の色々な場所に様々なマイクがセッティングされています。
さらに番組中に再生されるVTRの音や、PAと呼ばれる会場内のアナウンスや校歌、入場BGM等を会場内のミキサーさんから分岐してもらった音も放送に合わせてミキシングします。
私自身、始めは「こんなにもたくさんのマイクがあるんだー!・・・」と驚いたのを覚えています。
音声中継車内 |
「そんなにたくさんのマイクをどうやってミキシングするの?」と思われるかもしれませんが、サッカー中継の場合には中継の音声チーフを兼ねた「メインミキサー」と「ピッチミキサー」の2人態勢で音のミキシングを行っています。
スタジアムでの音作りは音声中継車内で行いますが、車内では前列が実況やリポーターなどを中心に会場音など全てをミックスし放送にのせるメインミキサーで、後列がピッチミキサーの私という配置になります。
ピッチ上のプレーの音を拾うため、フィールド各所にこのように14本程セットされているマイクを、ボールや選手の行方をカメラで映し出されたモニターで追いながらミキサーフェーダーを上げ下げするのがピッチミキサーとしての今回の私の役割です。
日本テレビの高校サッカーのうち準決勝、決勝は5.1chサラウンドで放送しているため、サラウンドでのミックスではピッチなど周囲の音にステレオ放送以上の注意を払う必要があります。その分ピッチミキサーのミックスが重要だと感じており気合も入ります。
メインミキサー |
今回、テレビから聞こえてくるボールを蹴る音や選手達の声などピッチ上の音は、実は私がミキシングしていました。また場内の特設スタジオから出演者の顔出し放送もありましたが、その出演者用のミキサーも別にいました。
ということで、私がミキシングしているのはあくまで放送された音の一部分であり、このように各担当者がミキシングした音声が、更にメインミキサーで調整されて放送されるのです。
さらに、私たち音声スタッフの仕事はマイクセットやミキシングだけではありません。
汐留本社や中継車とフィールドに居るスタッフ、またはアナウンサー席にいるスタッフなどと連絡を取るための『連絡線』と呼ばれるシステムや、アナウンサーやリポーターのイヤホンに聞こえる音声の構築をするのも音声スタッフの仕事です。
これら中継全体の音声システムのプランニングも行うのも、メインミキサーである音声チーフなのです。
このように、意外に音声さんの仕事って多いのです。(実感・・・)
今年の高校サッカーは冒頭の通り群馬県勢が初優勝で幕を閉じましたが、千葉県出身の私は密かに千葉県勢を応援していました。
決勝戦は、最後まで緊迫した見応えのあるゲームで、選手からたくさんの感動いただきました。私も選手を見習って早く音声チーフになれるよう日々精進します!
筆者 |