先日行われた「第71回全日本体操競技団体選手権大会」において、制作担当者から「今まで誰も見たことが無い映像をお茶の間に送りたい!」との相談がありました。そこで今回、超小型カメラを製作し鉄棒に取り付けました。
この鉄棒のどこかにカメラが付いていますが・・・わかりますか? |
今回の「鉄棒カメラ」の製作、取り付けにあたっては「選手の競技に支障のない大きさ、形状、色」が重要とのことで、大会主催者である日本体操協会との打ち合わせの中で、イメージはなんとなくでき上がっていました。とはいっても今まで前例のないことですので、どんな映像が撮れるのか?どこにつけると良いのか? など、制作担当者や私たち技術陣もわからない状態でしたので、鉄棒競技の練習をしているところに実際にお邪魔し、試作機で位置、画角など入念にチェックしました。
その映像と、カメラを取り付けた状態がイメージできるCAD図面、モックアップを制作担当者に渡し、協会に「取り付け可能」のお伺いをしたところ、「事前の選手練習時に付けた状態でチェックする」との条件付きでOKをいただきました。
そして、競技の3日前には完成品をもって、大会会場である群馬県の高崎アリーナへ。
実物を協会側に見ていただいたところ、「ケースを限りなく小さく」「色など見た目も考慮してほしい」「できる限り付いているのか分からないくらい」とご指摘をいただき早速改修に取り掛かりました。
改修の結果、ケース形状を2割程度小さく再設計し、色も現地で色見本と照らし合わせて仕上げ、翌日には改修済みのカメラを取り付けました。協会側からも「問題ないです」との回答をいただき、選手が練習しているときに画角確認、方向の調整をし、本番を迎えました。
選手にも「鉄棒にカメラが付く」という話が伝わっていたらしく、我々に「いつカメラが付くのですか?」との問い合わせも。
「もう付いています」と答えると「どこについているのですか?」と驚き、取り付けた場所を説明しても「こんな小さいのですか?全然気になりません」というお話をいただきました。
ご覧の写真のように演技中は、緊迫する選手の表情や動作、手の動きが間近で見ることができ、鉄棒のしなり具合も画面から伝わってきます。技を仕掛けた後、手が届かず鉄棒を掴めず落下する場面でも、通常の中継カメラでは捕らえことが出来なかった「どの位離れていたのか?」「鉄棒を掴めず落胆する選手の表情」までも視聴者にお届けできました。
今回も制作担当者や日本体操協会など大会関係者のみなさまにご協力いただき、綿密な打ち合わせや意見交換の結果が実を結んだものだと思います。
我々技術者にとっては、制作の要望に応えるのはもちろんですが、新しい機器作成や取り付けなどに挑戦する機会を与えられたことに感謝し、ワクワクしながら取り組めることが技術者の醍醐味だと思いますので、これからも挑戦し続けます!
結局、カメラはこのように支柱に付けていました! |
筆者