今年も男子プロゴルフの締めくくりの国内メジャー最終戦、「第54回ゴルフ日本シリーズJTカップ」が東京よみうりカントリークラブで開催され、NiTRoからも多くの技術スタッフが中継に携わりました。その中で入社8年目を迎えるカメラマンの私はENGカメラを担当しました。
私が担当したカメラは、中継カメラではない「ENGカメラ」というものです。中継カメラは生で映像を送るため、ケーブルが中継車やゴルフ場内の放送センターと呼ばれるコントロール室まで繋がっているのに対し、「ENGカメラ」はカメラ本体で映像および音声を収録します。
「ENGカメラ」にはケーブルが付いていませんので、どこへでも行ける身軽さが特徴で、その特徴を生かしてゴルフの現場での役割には次のようなものがあります。
① 中継カメラがいないホールのプレイを撮影して、ハイライト編集等の素材として使用する。
② 瞬時の移動が可能なため、何か突発的なアクシデントが起こった時に対応する。
③ 中継カメラがいるホールでも中継カメラと違った狙いの撮影をする。
④ 選手のインタビューや練習風景、提供バックの素材、スポンサー商品紹介等の映像を撮影する。
ゴルフ中継でのENGカメラは、試合中はティーやセカンド地点等からのショットおよびそのボールフォロー、グリーン上のパッド、コース内や各所での選手の歩きや表情など様々な映像と音声を収録し、撮影された素材を生放送中に放送センター内の編集ブースで編集後、放送されます。
「ENGカメラ」は、基本たった1台でこんなにも沢山の役割を担っているカメラなのです。
試合前のディレクターとの打ち合わせで狙いの選手はある程度決まっていますが、撮影の際に「どの位置に入り」「どの角度から」「どのサイズで」「どういうカメラワークで」等を、その後の編集を考えながら自分で組み立てて撮影していきます。
また、中継カメラで構成する映像は、複数台のカメラが色々な角度からそれぞれの映像を役割分担して撮影し、その時のプレーがより適した映像が撮れているカメラをスイッチングして放送するのに対し、「ENGカメラ」は1台なので、1つの事象に対しその1ヶ所からプレイの凄さ、選手の表情、ギャラリーの雰囲気等をいかに一連で見せられるかを考えながら撮影することがポイントです。
例えば優勝が決まるシーンでは、「優勝パットを決めた選手の嬉しそうな顔から背後の応援している家族にピントを送った瞬間に抱き合った映像」など自分の考えた構成が想像通りにハマって収録できれば最高で、こんなに気持ちいいことはありません。これも「ENGカメラ」の楽しさの1つです。
さらに、自分が撮影した映像は引退した後でも生き続けます。もしそれが歴史に残る映像であれば、その後何十年も使用される事もあります。カメラマンにとってこんな幸せな事はありません。
私はまだ一度も経験はありませんが、ホールインワンを撮れたら最高ですね。その選手の表情、プレイ、ギャラリーの歓喜等、一生残る映像が撮れるかもしれません。今大会は、宮里優作選手がご家族の見守る中、他の選手を寄せ付けない圧巻なスコアで優勝し、逆転賞金王で有終の美を飾りましたが、私はその場で優勝パッドやその後の家族と喜ぶシーンを撮影していました。
ホールインワンやアルバトロス等、選手の素晴らしいプレイや凄い記録を撮影する事をモチベーションの1つとして、これからもゴルフ中継のENGカメラを頑張ります!!
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