NiTRoでは箱根駅伝、東京マラソン、さいたま国際マラソンなどロードレースの中継技術を担当しています。そのようなロードレースの現場で起こっている出来事を本社まで送信するために、欠かせないものが「マイクロ伝送装置」です。場所によっては、光伝送方式の固定回線や衛星を使用したSNGで本社まで画音を送ることもありますが、インフラのない山林やケーブルを敷くことができない移動中継車の映像を遅延量も少なく伝送できる方法としては「マイクロ伝送装置」を使用することが一般的です。今回は箱根駅伝予選会を例に「マイクロ」を実際にロードレースで運用している姿を
含めてご紹介致します。
■ マイクロ伝送装置...?
マイクロ伝送装置とは電波の中でも300MHzから300GHzの周波数帯を使用した伝送装置でのことで、中継現場からの伝送用や移動中継車の伝送波として使用しています。現場でカメラマンがいくら素敵な映像を撮っても、その映像を正しく伝送しないと各家庭のテレビに届けることができません。マイクロ波は目に見えることはありませんが、とても重要な役割を担っています。
■ 箱根駅伝予選会×マイクロ...?
箱根駅伝予選会とは、東京・立川に設定された20キロのコースを各大学から約12名の選手が一斉に走り、チームの合計タイムが少ない順に上位10チームが正月の東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)に出場することができる予選大会です。その中継を行うためにもマイクロ伝送装置を欠かすことはできません。
スタート地点である陸上自衛隊立川駐屯地内、10km、15kmの定点、トップ集団を狙う移動中継車(1号車)や中盤の集団を狙うトライクの2号車、3号車に至るまで、それぞれのカメラの画や音をマイクロ伝送装置の電波に変換して発砲します。その電波は昭和記念公園内に設けられた、「センター」と呼ばれる簡易送受信基地局で、スタッフが受信用アンテナを各移動車や定点に向けて受信し、レースの映像が乱れないように画と音を繋いでいきます。それでは、実際にどのような場所でマイクロ受信作業を行っているのか、下の写真をご覧ください。
100m離れた場所からのタワー
真下からのタワー
タワー最上段の様子
写真を見てわかる通り、マイクロ受信の作業はとても高いところに登って行います。今回は1段が1.5mの鉄製パイプを使った組み立て式の足場、通称"イントレ"を15段重ね、約23mの高さで電波を受けていることになります。
マイクロ波は見通しが良ければ良いほど、電波を妨げる障害物となるものがなく、正確に信号の送受信ができるため、このような高い場所にマイクロ機器を設置することは少なくありません。危険を伴う作業ではあるにも関わらず、あまり目立たないことの方が多いですが、陰ながらオンエアを支えている重要なポジションです。ロードレースにおいては必ず存在する仕事ですので、これからの駅伝やマラソンで少し想像してみると面白いかもしれません。
筆者