日本テレビの支局のうち、北関東3県の支局はそれぞれ1人で受け持つ「1人支局」となっています。
群馬県と茨城県の間に位置している栃木県にあるのが、私が担当する宇都宮支局です。
「1人支局」ということは、一人ですべてをやらなければいけません。
私は、NiTRoの「ENGカメラマン」で、映像を撮ることが主な業務なのですが、その映像を撮影するためには「情報」が必要なのです。そこで、先ずは「記者活動!」
現場がどこで、どんな状況で・・・といった「撮影に必要な情報」もあれば、容疑者の「人定や認否、人間関係や動機」など、「撮影する!」ために必要な情報を自分で取材しなければならないのです。
これらの情報を元に、FPU車と呼ばれる映像伝送車を自ら運転して現場に駆け付け、現場の撮影。撮影の合間にも、現場にいる刑事部長や捜査一課長、鑑識課長ら警察の幹部から、様々な追加情報を引き出します。
それらの情報をもとに、さらに追加撮影し、東京汐留の本社へ映像を素早く送ります。しかしマイクロ波を使用するFPUでの伝送では電波が届く場所が限られているため、送れる場所まで移動が必要です。
伝送後は、収集した情報を本社の記者と共有するべく、メモを起こし原稿を書きます。
つまり1人支局ということは、頼れるのは自分だけなので、ドライバー・記者・カメラマン・素材の伝送・本社との連絡など一人で4役5役を受け持つという事です。
ではなぜ「1人」なのか? おそらく、「首都圏や東京近郊の都市に比べれば北関東は事件・事故が少ない」というところなのでしょう? 以前はそうだったかもしれませんが、最近ではこのあたりでも、事件事故が多い気がするのですが・・・。そして「支局」の利点は、事件・事故・災害などの時にいち早く駆けつける事ができ、地域に密着していることで、より広く、より深く、取材することができるところです。
しかし都心から遠いということは、本社から「応援が届きにくい」ということでもあります。
そのため、記者やSNG車(衛星中継車)が配置、配備されている「さいたま支局」に応援をお願いしたりして、支局同士助け合いながら他社との競争に備えています。
撮影した映像を送る映像伝送システムも、今までの「FPU(地上波)」や「SNG(衛星波)」から、ここ数年で劇的に変化しています。
最近では撮影した映像をパソコンに取り込み、インターネットを使った伝送システムが登場。ちょうど動画をメールで送るイメージですが、そのひとつに「TVU」があります。宇都宮支局にも、2015年より、この「飛び道具」が配備されています。
TVUとはインターネットを使用した伝送手段で、様々なキャリア(3G/LTE/4G, WiMAX)を使い、最大10本の回線を束ねて使用するため、回線が切れにくく高画質で、「簡易生中継」にも対応できるスグレモノです。
このスグレモノを支局に配備すれば、素材伝送だけでなく生中継も出来ます。北関東では群馬県や茨城県にも応援に行くことを想定し、真ん中にある栃木県に配備されています。
しかし、1人で生中継は・・・大変です。
昨夏、栃木県に関東初の「大雨特別警報」が発令された日、夜から激しくなった雨と河川の氾濫、避難勧告の続出・・・。夜間には、土砂崩れが民家を襲い、家人が生き埋めだとの一報。
早朝の「Oha!4 NEWS LIVE」からTVUによる生中継を展開しました。
昼には本社のSNG中継車の応援を得て休憩。・・・のはずが、道路の冠水などで応援スタッフが到着できない状況に陥り、本社記者と二人三脚のTVU中継は続きました。結局、夜のニュース、「NEWS ZERO」まで十数回、生き埋めとなった被害者の救出作業を伝え続けました。
が、応援は来ませんでした・・・。
ところで、カメラマンには、絵心が必要です!
普段、自分が待機しているのは栃木県警本部の記者クラブ。
そこで、ひょんなことから県警の広報課が発行している、広報誌の表紙のイラストを描くことになり、10年間にわたりパトカーや県警ヘリなどを描いてきました。
1人支局ではそんな絵心が必要な事も。
以前、宇都宮地裁でのある裁判に興味を持った番組側から放送を大きく展開したいとの要望があった時のこと。番組の担当者から、「法廷イラスト」はないのか?と問われたのですが、あいにくイラストレーターの手配はなし。しかし「宇都宮支局のカメラマンが描けます!」と胸を張って応じる記者・・・。
なぜか支局の中継車に常に画材を載せている筆者は、カメラを置き、パン棒を筆に持ちかえて法廷内の様子を描きました。
1人しかいなくとも「様々な武器で他局を圧倒していこう」と、機材や画材の手入れをする宇都宮支局です!
記者クラブにて原稿を書いている筆者