日本テレビでは箱根駅伝、東京マラソン、さいたま国際マラソンなどのロードレース中継を放送しています。ロードレース中継ではランナーたちの力走や繰り上げなどの感動的な場面がいくつも映し出され、その映像の中には、選手名やタイムと言った必ず目にする情報が表示されていたと思います。
その情報がどんなデザインで、どんな内容が表示されていたか、記憶に残っていないかもしれませんが...。
今回は、そんな箱根駅伝の放送を視聴すれば必ず目に入る「情報」について、今年の正月、1月2日・3日に行われた「第93回箱根駅伝」を例にリポートします。
■リアルタイムCG
マラソンや駅伝などのロードレースで表示される「情報」を作っているのはリアルタイムCGというシステムです。リアルタイムCGを簡単に言うと、「表示させるデータを変えられる、動くテロップ」という感じでしょうか。
例えば、刻々と変わるレース状況に合わせて、選手名やタイムといった情報を、手入力でその都度テロップを作るのは大変な労力です。そこで、あらかじめテロップのひな形を作っておき、そこにレース状況に応じて選手名やタイムのデータを流し込んで、画面に表示させる仕組みがあれば便利なわけです。
また、測定されたデータをテロップとして回転させながら表示したり、区間新など強調したい情報では表示を点滅させたりと、動くテロップアニメーションをつけておければ、より視聴者に伝わりやすい演出ができます。このような要望を実現するのが、リアルタイムCGというシステムです。
実際にオンエアされたリアルタイムCGを2画面紹介します。
箱根駅伝では多くの画面表示にリアルタイムCGが関わっています。
■リアルタイムCGチーム
NiTRo ポスプロ技術センター メディア技術部のリアルタイムCGチームでは、箱根駅伝に「CG制作」と「CG送出オペレーション」という2つの役割で関わっています。
1つ目の「CG制作」は、レース当日までに本業のリアルタイムCGを作ること。もう1つの「CG送出オペレーション」は、レース当日にリアルタイムCGを画面へ表示するために制御端末を操作することです。
つまり、リアルタイムCGチームは画面表示を作って、さらにレース中はオペレーションも担当するというチームです。
■両方行う強み
CGを制作した者が、そのままオペレーションをするのには理由があります。
自らが制作をしたCGが使われる「場面」や、「目的」などを現場で共有できるので、その空気をくみ取って、CGのデザインや制作に活かせること。また、たすきの繰り上げスタートに代表される駅伝独特のルールを理解してCGを制作しているので、発注内容と大きく異なる画面表示になるリスクが低くなることです。
実は私たちは10月の箱根駅伝予選会からCG制作とオペレーションを担当していますので、予選会から勝ち上がった大学や選手たちが、箱根駅伝の本選で活躍してくれると、とても感慨深くなります。
■こだわり
第93回 箱根駅伝は、青山学院大の総合優勝3連覇、大学駅伝3冠という偉業で幕を閉じました。
箱根駅伝を走ることは、学生ランナーたちにとって故郷へ錦を飾れる特別なレースだと思います。ランナー自身の名前がテレビを通じて、親御さんやご親族、全国の関係者の目に届くわけですから。
その名前を表示しているのも、主にリアルタイムCGです。
もしかしたら、その画面に映っている選手は、4年生にして最初で最後の箱根駅伝を走るのかもしれません。走る姿が運悪く映らないかもしれない、けどせめて名前だけでもテレビに表示してあげたい。それも名前の漢字が簡略、代替えされずに正しく表示してあげたいと思っています。
パソコンを使っていると気が付くかもしれませんが、珍しい漢字の名前が正しく表示されない場合があるかと思います。
これは、よく使われる常用漢字以外はパソコン内のフォントに登録されていないからです。そのため、選手名に珍しい漢字があれば、その漢字のデザインを作ってフォントに登録します。
細かい内容で気づかないと思いますが、その選手の関係者には、このこだわりが伝わっていると信じています。
■おわりに
私たちのチームは、次は東京マラソン2017のCG制作とCG送出オペレーションを担当します。
箱根駅伝では、リアルタイムCGに注目していたという方はもちろん、注目していなかった方も、次の東京マラソンのCGにも「こだわり」が詰まっていますので、ぜひご注目ください!
筆者