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「ゴルフ場から感動をお届しています。」

2016.11.07 ポスプロ技術

私が所属する報道編集センターCV運用部の部員は、東京汐留の日本テレビタワー内に身を置き、主に報道番組の編集を行っています。しかし、春と秋になると汐留を飛び出し、日本全国のゴルフ場に出向いて日本テレビのゴルフ中継の仕事をします。


■機材を持ち出し、"小さな放送局"をつくります

まず現場に大量の機材を運びます。

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私たちが担当する編集機材だけでも、画像左・赤枠の量が有ります。
ゴルフ中継全体となると、機材は何とトラック3台分です。これらの機材を30名の技術スタッフと積み込みます。
普段、パソコンのマウスやキーボードの操作で指先しか動かさない私たちにとっては、ジェラルミンケースに収まった放送機材は重く、さらにそれがトラック3台分になると、、、汗だくです。
私たちは手慣れた技術スタッフの足を引っ張らないよう努めます。トラックの中では機材の上に登り機材を平積みしていきます(登っているのは筆者)。

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そして、この機材をゴルフ場施設内に仮設した「放送センター」と呼ばれる部屋に組み込みます。

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「放送センター」とはゴルフ中継番組を放送するために必要な「期間限定の放送局」のようなものです。
トラックから降ろした機材を配置し、機器同士をケーブルで接続していきます。
わずか2日間で"期間限定の放送局"が出来上がります(画像右)。
放送センターでは各ホールから映像・音声を集約し、必要な部分を繋ぎあわせ、汐留の日本テレビ本社に送信します。
さらに、日本テレビ内でテロップ等の細かい処理が施され、ご家庭のテレビに届けられます。


■"フロントナイン"を素早く、丁寧に編集!

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私たちCV運用部の役割として「フロント9(ナイン)」の編集というものがあります。
ゴルフという競技は1ラウンド(1~18番ホール)プレーするのに4時間半程かかるため、番組としては勝敗の掛かる後半ホールを中心に中継します。特に放送時間が短い地上波放送はこれに当たります。
そのため、中継されない前半ホール(1~9番ホール)はENGカメラで撮影したものを放送できる長さにギュッとまとめます。編集上りは短いもので30秒未満、長いもので4分程度の長さにします。
フロント9では、主に"スコアを伸ばしている選手"や"注目選手のスーパープレー"を中心に編集しますが、編集作業にもたついていると放送するチャンスを失い、全てが水の泡と化します。
そうならないためにも、私たちは4人体制でチームを組み、素早く丁寧に編集を仕上げ、放送に間に合わせます。
また、後輩の育成も現場で行います(画像右)。本番前の空き時間を使い、ひと回り以上歳の離れた後輩を指導します。
感動がギュッと詰まった濃厚なVTRを作る術を後輩に伝え、次の世代にバトンタッチ!といきたいところですが、さすがにこれは1回や2回では継承できません。感動が詰まるまでには何年もかかります!


■予定調和とは無縁だからこそ面白い

時にスポーツは予想を大きく裏切り、私たちを大いに楽しませてくれます。
10月6~10日に行われたHONMAゴルフトーナメントも、まさにゴルフ史に残る劇的な結末を迎えました。
10月9日の日曜日は最終日になる"はず"でした。そして、午後4時には番組も終了する"はず"でした。
しかし、この日の現場では、天気予報にはなかった大雨に見舞われます。
競技開始が遅れたことにより、放送終了予定の午後4時までに競技が終わらない可能性が出てきました。
番組は正午からスタート!後半ホールは大混戦!!
そして、追い討ちをかけるように「プレーオフ」に突入です!!!
プレーオフとは18番ホールが終わった時点で同スコアの場合、決着がつくまで18番ホールのプレーを繰り返して勝敗を決めることです。
この日は池田勇太選手と韓国のソン・ヨンハン選手の一騎打ちになりました。
放送枠が1時間半延長され、最大延長時間の午後5時半まで放送が続きましたが、日没により、4ホール目が終了した所で翌日に持ち越し!
国内男子ツアーでは史上初めてプレーオフが月曜日に持ち越されるという珍事になりました。
結果、プレーオフを9回も繰り返し、池田勇太選手が見事優勝しました。


■放送終了のあとは...

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放送終了後、私たちにはもう一仕事あります!それは、「撤収」です。
"期間限定の放送局"を3時間程度で解体し、放送センターを「さら地」に戻します。
辺りは真っ暗の為(画像左)、照光器具の明かりを頼りに撤収作業を進めます。
トラックに機材を積み込んだら汐留の日本テレビタワーに戻り、機材を元の場所に戻した時点で業務終了です。
長い長い一日が終わりました。
体はクタクタに疲れ、正直つらいと思う時もありますが、スポーツ史に残る中継に携わることができた喜びもあります。
そして、翌日には心身ともにリフレッシュです。
23歳で初めてゴルフの中継現場に足を踏み入れてから19年の歳月が流れましたが、まだまだ現場に出向きます!
現場で生まれる感動をご家庭のテレビに届けるため、42歳になっても日々精進です!

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筆者です。


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番外編

大会期間中、誕生日を迎えた仲間がいました。
サプライズのお祝いです。
働いてばかりではありません。
楽しみもあります。