今年の11月に宮崎カントリークラブで行われた
「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」、
12月の東京よみうりカントリークラブで行われた
「ゴルフ日本シリーズJTカップ」と、
日本テレビのゴルフ中継で目新しいバーチャルCGを
ご覧になった方もいるのではないでしょうか。
バーチャルCGとは、実際の映像にコンピュータの映像を合成し、
現実をあたかも仮想空間に存在するように見せるCG技術です。
今回のゴルフ中継では、バーチャルCGを使用することにより
18番ホールのグリーン上でボールからカップまでの
アンジュレーション(起伏、うねり)を3DCGで表現し、
パッティングラインを視聴者に分りやすく解説する事ができました。
しかしバーチャルCGを実際のグリーン上に映し出すには、
仮想空間上(コンピュータ)に18番ホールのグリーンを
再現させなければなりません。
例えば、実際のカメラを動かした時には、
コンピュータ上のカメラも同じ位置で同じ移動量で動かなければ、
CGと実際の映像がずれてしまいます。
この画像は、実際にCGをグリーンに合成させた画像で、
5m表示の左側にある白い丸がボール位置です。
今回の最大の見所はバーチャルCGと実際のカメラ画像を合成した時に
バーチャルのみの画像となるところです。
※ バーチャルCGカメラは俯瞰へと動き
※ 最後はボールからカップまでのアンジュレーションへと移動します
こちらは実際の選手からの見た目になります。
ところで、バーチャルCGで18番グリーンを再現するには、
実寸で計測する事が必要となります。
その計測は事前に株式会社CSS技術開発様に依頼し、
「3Dレーザースキャナー測量器」と「レーザー光波測量器」を使用し
ミリ単位以下までの細密測量を行い18番グリーンを3DCG化していきます。
まず、「3Dレーザースキャナー測量器」を用いて
18番グリーン全体の地形の形状を3次元データ化します。
*3Dレーザースキャナー測量器 (測量データはCADデータ化する為、
即座に3DCG化できます)
作業的にはレーザースキャナー測量器を360度回転させ、
同時に測定器上につけたデジカメで実景を撮影という動作を
2・3回繰り返して計測し、地形の形状を3次元データ化します。
(因みにこの3次元データから、「3Dプリンター」で石膏の雌型を作り、
粘土モデルを作成する事もできます)
※3Dプリンターから出力したグリーン形状(今回使用したデータではありません)
次に「レーザー光波測量器」を使用し、
グリーン全体の大きさ、勾配などを詳細に実測します。
*レーザー光波測量器 (従来の三角測量を光波によって計測し数値化します)
ここで得た詳細な数値を先に作成したモデリングデータに加える事により、
コンピュータ上に実寸の18番グリーンを再現。
こうして、出来上がった3DCGを実景の映像とうまく合わせる事ができるのです。
今回OAされた「グリーンバーチャル」は、
3DCG化した地形とのカメラ合成から、ボール目線、カップまでの
距離表示を可能とするシステムとオペレートソフトウェアで構成されています。
これらはNiTRoスタッフも多く在籍する、
日本テレビコンテンツ技術運用部バーチャル工房のスタッフの
英知を集結させて開発され、実用する事が出来ました。
関係各所の皆様、本当にありがとうございました。
ゴルフ中継の現場は、セッティングから撤収まで期間も長く、
また技術スタッフと制作スタッフも大所帯でチームワークが必要不可欠です。
今後も、NiTRoはチームワークを生かし、
技術を駆使した「新しい映像表現へのチャレンジ」を続けてまいります。
筆者:放送センター内、バーチャル・オペレート風景