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日テレの財産 12万本のD2テープのファイル化完了

2015.08.31 ポスプロ技術

今、放送界では4K、8Kが話題となっていますが、

もう一つ、放送界にとって大事なテーマ、

それはアーカイブ素材のファイル化です。

今からそれほど遠くない将来、放送局からテープは勿論、

それを再生するVTRすら無くなっている時が間近にせまっているのです。

    

   

「シャボン玉ホリデー」「スター誕生!」「11PM」「今夜は最高」等々、

ここには挙げきれない日本テレビの、いや日本のテレビ界の歴史に

燦然と輝く名番組が収録され保存されていた、

およそ12万本のD2テープのファイル化が、

今年5月に完了し、間もなくリリースされることになりました。

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D2テープのファイル化作業は、

今から3年前の2012年4月に、麹町アーカイブス館に

14式のD2VTRとエンコード端末を設置して始まりました。

これまでのテープtoテープでダビングすればよいという考えの様に、

「D2テープから映像・音声をファイルにする」だけでは無く、

メタデータの強化、使用頻度なども含めた複合的な管理を行う事で、

これからの番組制作に生かす事を念頭に置いて進める、

それが今回の「アーカイブ素材のファイル化」です。

    

    

     

D2VTRとは、1988年に放送局用に開発されたVTRで、

コンポジットデジタルフォーマットを採用し、

それまでの1インチVTRをはるかにしのぐ高画質となり、

広く民放各局やポストプロダクションで活躍しました。

アーカイブで運用されていたD2VTRには、

もともとフィルム、2インチ、1インチなどで収録されていたものを、

過去にD2VTRへダビングしたものが多数あります。

2インチなどは一度1インチへダビングしたのちに

さらにD2へダビングしている訳で、

最初からD2収録であったものに加えて、

多種多様な来歴をもつ映像が集まっています。

   

      

ゆえに、画質も状態もそれはもう様々で、

中々、単純に作業できるものではありません。

あまり利用実績がなく、かつ、古い番組のVTRなどは、テープを再生した途端に、

VTRがヘッド詰まりを起こし、再生不能となったり、

エンコード中に突然VTRエラーが頻発して何度もやり直しを強いられたり、

ベストな状態でエンコード作業を進めるためには、いろいろな工夫が必要でした。

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その工夫の一つが、テープを一旦テープエンドまで早送りし、風通しをした後、

頭まで巻き戻す時には、なるべく低速で戻し、

テープとヘッドを馴染ませる、というものです。

そんなおまじない的な事も駆使して

何とかエラーを出さずに最後までVTRが送られる事を願ったりしました。

   

    

また、作業をする上で、番組内容とメタデータとの照合も必須で、

番組名、放送日、出演者等がメタデータと合致しているかの

チェック作業もしなければいけません。

そのどれかが違う場合は、

アーカイブセンターのメタデータ班の方々に報告し、

チェックを受け、確認しての作業を行うのです。

   

    

メタデータの管理、修正は

前述のアーカイブセンターのAX-ONさんのスタッフが担当しており、

まさに日テレグループのチームワークで

日テレの財産を後世に残す事が出来たのではないかと、

やや、大げさかもしれませんが、しかし、実感を持って感じた次第です。 

   

  

     

    

個人的にも、

以前、自身が編集を担当させてもらった数々の番組に、再会出来たのも嬉しく、

当時徹夜で仕上げた特番や、オープニングの合成で苦労した番組、

今でも何故かカットのタイミングを覚えている番組など、

思い入れのあるかつての番組に、もう一度出会えた事は

まさに編集マン冥利に尽きる仕事でした。

また、スタッフロールに先輩諸氏の名前を発見したり、

生放送中のCM流し部分にフロアで働いている

顔なじみのスタッフの若い頃を発見したりと、

本当に楽しい仕事でもありました。

   

    

    

今後、放送業界はますますファイルベースへの移行が加速していきます。

この先、収録から編集、配信に至るまで、

テープを介さないワークフローが完全に構築される時代も、

そう遠くない未来にやってくるでしょう。

今回、D2テープで運用されていたアーカイブ映像の

ファイル化が完了したという事は、

テレビ局における連綿と続いた番組制作工程の

大いなる変化の第一歩と、いえるのかもしれません。

    

D2VTRの変換を終えた今、達成感を感じつつ、そう思いました。

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