WOWOWファイリング室の業務について、前回は【ファイリング】についてお話しましたが、今回はその続き、クオリティチェックとも呼ばれている【技術チェック】についてお話します。
江東区辰巳 WOWOW放送センター |
WOWOWファイリング室は東京都江東区辰巳のWOWOW放送センター内にあります。
ちなみに写真の右側は前回のリポートでは更地だった場所に新しく建った「C館」と呼ばれている建物です。
辰己放送センターC館は4階建てのモダンな建物で、最上階には食堂がオープンしました。
■ 前回のおさらい
前回のリポートでは、ファイリング室に納品された放送素材を、素材サーバに取り込む作業である【ファイリング】のお話をしました。(前回のリポート【ファイリング】についてはこちら)
プレビュー室内観 |
ファイリング後には、その素材が「放送に適しているかのチェック」を行い、「放送して良いか、ダメか」を最終的に決定します。
そのチェックは、プレビュー室と呼ばれる防音の個室で行います。(プレビュー室についてはこちら)
■ 技術チェック
まずは技術チェックです。プレビュー室に入り、ファイリングした素材が保存されている素材サーバからチェックする素材を呼び出します。
1. データ照合
最初にデータの照合を行います。照合とは「双方を照らし合わせて、正しいか否かを確かめる事」で、ここでの双方とは、「Job Sheetのデータ」と「ファイリングのデータ」を指します。これらは、制作担当者が作成した素材情報を元に生成されます。
Job Sheet |
Job Sheetとは、ざっくり言うと、素材のタイトルや長さ、テープ番号、音声の種類(モノラル、ステレオ、サラウンドなど)、言語(日本語、字幕版、吹替版)などの「素材の情報が記載された用紙」の事です。
私たちで言うところの、氏名・住所・年齢・職業・電話番号などの「個人情報」ですね。
ファイリングデータ |
比較するもう一方のファイリングデータは、素材サーバにファイリングするための情報で、中身はJob Sheetと同様の内容になっています。
また、Job Sheetの情報以外、たとえばファイリングの日時や使用した機器についても記載されています。
正しくはこの2つは同じ情報になるので、照合を行って、相違ない事を確認します。
もし、相違がある場合は、制作側に問い合わせます。
2. 機械的チェックの確認
データの照合が終わったら、ファイリング時の【機械的チェック】の結果を確認します。
①VTRチェック VTRがエラー無く正しく再生していたかどうかのチェックを行います。 |
VTRチェック表示欄 |
②ベースバンドチェック オリジナルテープの映像・音声と素材サーバに入った映像・音声で比較を行い、音声異常や入力比較エラーなどがないかチェックを行います。 |
ベースバンドチェック表示欄 |
③ファイルチェック
ファイリングしたファイルそのものに異常が無いか、映像の黒味・音声の無音などが機器側で設定した時間以上継続していないかのチェックを行います。 |
ファイルチェック表示欄 |
上記①~③のどこかでエラーが発生した場合には、それぞれの段階で「エラーログ」がデータとして残ります。エラーログがあった場合には該当箇所を再生して、映像・音声に問題が無いかを確認します。
問題があった場合、元素材テープをVTRで再生して、該当箇所を確認します。テープに問題が無ければ、もう一度ファイリングを行います。
もしテープ自体に問題があったときにはテープを制作側に差し戻して、修正等ののち再納品してもらうなどの措置を取ります。
3. 人間による技術的チェック
3点チェック中(再生中) |
続いて、人間の目と耳による【技術的チェック】を行います。
④再生チェック
ファイリングした素材を再生して、映像・音声のチェックを行います。
・ 番組は、最初・真ん中・最後の3点を一定時間、自動再生する「3点チェック」
・ 番宣・CMは、全編を再生する「全編チェック」を行います。
人間の目と耳を使って映像には、ノイズや不自然な黒味・静止画が無いかなど、音声には、ノイズや音切れ、適正な音量かなどをチェックします。
以上①~④で問題無ければ、技術チェック完了にして、ファイリング室の素材サーバからマスターの送出サーバに転送されて放送に至ります。
■ おわりに
筆者 |
2回に渡りご紹介してきました 【ファイリング】・【技術チェック】 ですが、ご紹介したようにファイリング室は、制作された素材をサーバにファイリングして何段階もの品質チェックを行い、「放送して良いよ(=技術チェック完了)」と判断する重要なセクションです。技術チェック完了にした素材は、放送されるまで誰も再確認を行わないので、私たちは日々慎重にチェックを行い、放送の安定運用に携わっています。